L'Erotisme 3 ❤︎ 刺青

【刺青】
二胡       木村ハルヨ
朗読       mihiromy
緊縛師    怜女王様
踊り子    飯干未奈



それはまだ人々が「愚」という貴い徳を持っていて、世の中が今のように激しく軋み合わない時分であった。


この若い刺青師の心には、人知らぬ快楽と宿題とが潜んでいた。


その女の足は、彼にとっては貴き肉の家宝であった。


娘はそこに隠れたる真の「己」を見出した。



一点の色を注ぎ込むのも、彼にとっては容易な業でなかった。


「苦しかろう。体を蜘蛛が抱きしめているのだから」


「親方、早く私に背の刺青を見せておくれ、お前さんの命を貰った代わりに、私はさぞ美しくなったろうねえ」


「親方、私はもう今までのような臆病な心を、さらりと捨ててしまいました。お前さんは真先に私の肥料になったんだねえ」


女は黙って頷いて肌を脱いた。 


折から朝日が刺青の面にさして、女の背は燦爛とした。



撮影  Shigeki Tsuji


谷崎潤一郎  【刺青】より


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  BLUE ROSE Dance Project / 舞道 飯干未奈

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